RESEARCH CONTENTS研究内容

溶融塩電解技術を始めとした
アイ'エムセップ独自の研究

RESEARCH CONTENTS溶融塩技術

「溶融塩」という液体は、水溶液や有機性の非水溶液では得られない魅力的な特性や機能を持っており、これらを正しく理解し応用することで、特に電気分解や電池の電解浴(電解質)として、そして広く製造業全般の分野で新たな可能性を見出すことが期待されます。この液体は古くから存在が知られていますが、その特性や構造には未知の部分も多く、未だに秘められた可能性があると言えるでしょう。

例えば、アルミニウムの電解製錬は溶融塩電気化学を基盤にした大規模産業として世界中で普及しています。また、EV、5G、CO2の資源化とリサイクル、水素社会、アンモニアエコノミーなどのキーワードによって彩られる「SDGs」社会へのパラダイムシフトは、コロナ後の社会の変化と相まって、社会全体の大きな流れとなっています。この流れを正確に捉え、将来への展望を開くために、アイ’エムセップ株式会社は「炭素めっき」、「CO2の資源化」、「ナノ粒子の製造」、「リサイクル」、「アンモニア電解合成」といった様々な溶融塩電気化学プロセス技術を創出し開発してきました。また、広範な溶融塩を活用した技術にも国内外で高い関心と期待が寄せられています。

一方、溶融塩電解による金属リチウムや金属マグネシウム、希土類金属の製造など、歴史の中に埋もれていた重要な技術が再評価され、新たな役割を果たすことが期待されています。また、溶融塩電解技術は鉄鋼製錬などの巨大産業における水素還元製鉄法(グリーン鉄鋼製錬法)の開発にも新たな技術シーズを提供できる可能性があります。これらの流れが相互に増強しながら結びつき、「溶融塩技術」による「新産業」の創成やグリーンイノベーションの実現が期待されるものと考えられます。

RESEARCH CONTENTS二酸化炭素の資源化

「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」という目標のもと、私たちは「CO2」の排出量を可能な限り削減し、排出されたCO2を捕集して環境への負荷を最小限に抑えながら貯留・管理するという消極的な観点ではなく、積極的に資源として活用する方策を模索する必要があるという社会的要請が高まっています。アイ’エムセップ株式会社では、「炭素が主要な役割を果たす社会」の実現を目指し、これを可能にする革新的な技術の開発と社会への実装を進めています。この技術の基礎となる反応は以下の通りです。

溶融塩化物中に炭酸カリウムを溶解させて電解を行うと、陰極表面に炭素膜が形成されます。

陰極反応:CO32– + 4e → C + 3 O2–

この時、
電解浴中に二酸化炭素を吹き込むと、O2-イオンの一部が

CO2(g) + O2– → CO32–

の反応でCO32–となり、これは再び陰極で炭素にまで還元されます。この反応に必要なO2-イオン以外の、余ったO2-イオンは、

陽極反応:2O2– → O2↑+ 4e

の反応で酸素ガスになり、陽極で回収されます。

結局、全体の反応は以下のようになります。

全反応:CO2 → C + O2

陰極で生成される炭素は、電解条件を調整することで、さまざまな形状、形態、構造を得ることが可能です。実験によって、滑らかで密着性の高い炭素めっき膜の形成も確認されています。

このシステムが実現すれば、例えば火力発電所や工場から排出されたCO2を溶融塩に吸収させて炭酸イオンに変換し、再生可能エネルギーを用いて溶融塩中で電解することで、高機能性炭素材料に変換したり、固体炭素燃料として固定化することが可能になります。その後、得られた炭素は、電気化学的エネルギー変換デバイスの部材や燃料電池(ダイレクトカーボン燃料電池やCO2電解・燃料電池一体型装置)の燃料として効果的に活用することができます。また、金属製錬において還元剤としても利用することが考えられます。

アイ’エムセップ株式会社では、この技術を「CO2の資源化とリサイクルシステム」の実現に貢献できる重要なテクノロジーと位置づけ、開発研究を進めています。具体的な例として、この方法で得られた機能性炭素を電気自動車(EV)の車載用二次電池の性能向上に応用するプロジェクトをSECカーボン株式会社と共同で立ち上げ、事業化と社会実装に向けたロードマップを進めています。

RESEARCH CONTENTS炭素めっき

アイ’エムセップ株式会社では、溶融塩を電解浴として使用することにより、「炭素の電解めっき」を実現しました。この革新的な技術は、水溶液系では実現困難だった炭素めっきを可能にしました。この技術は、既に広く普及している水溶液系の電解めっきと同じく、電気化学反応を基にしています。

具体的には、溶融塩中に含まれるカーバイドイオン(C22–)を炭素源とし、金属基板を陽極として処理することで、C22–が酸化されて金属基板表面に炭素めっき膜が形成されます。この革新技術は、将来の電気自動車(EV)や5G時代の要求に応えるためのエネルギー変換電気化学デバイスの性能向上に貢献することができます。また、ボルト、ナット、ねじなどの締結部材の耐食性向上にも寄与することが可能です。さらに、伝熱・放熱用部材への応用や、各種電気分解用の電極やバイオセンサーへの適用も期待されています。

この技術はまさに、社会が「SDGs」を掲げ、カーボンニュートラルでクリーンな新時代に向かうために重要な技術と位置づけられます。

RESEARCH CONTENTSアンモニア電解合成

増加し続ける人類の生命と生活を維持するためには、食糧の増産が不可欠です。そのためには、アンモニアという窒素肥料の確保が必要です。同時に、水素は環境やエネルギー問題の解決において重要な役割を果たす貯蔵材料や輸送媒体、窒素酸化物の還元剤としても期待されています。しかし、現在のアンモニアの製造方法は、100年以上の歴史を持つハーバー・ボッシュ法に頼っています。

現行のハーバー・ボッシュ法では、天然ガスを水素の原料として使用するため、地球温暖化ガスの代表的な例である二酸化炭素(CO2)の排出が避けられません。そのため、アンモニアの増産とCO2の削減は、相反する課題となっています。しかし、以下に述べる「常圧アンモニア電解合成法」の社会実装により、この課題は容易に解決できます。

アイ’エムセップ株式会社では、溶融塩を電解浴に使用することで、「常圧アンモニア電解合成法」を提案し、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。以下に(1)と(2)の方式を示します。

(1)水素と窒素からの常圧アンモニア電解合成
反応式:1/2 N2 (g) + 3/2 H2 (g) → NH3 (g)
(理論電解電圧0.05 V)

(2)水と窒素からの直接常圧アンモニア電解合成
反応式:1/2 N2 + 3/2 H2O → NH3 + 3/4 O2
(理論電解電圧1.17 V)

上記(1)、(2)の何れの方式についてもその可能性は実証されております。例えばアイ’エムセップ株式会社では、方式(2)を進行させるプロトタイプの電解システムセルによる連続電解を行ない、端子電圧2.0Vでの連続電解が可能であるとの見通しを得ております。さらに現在は、(1)、(2)両方式の特徴を組み合わせることで端子電圧1.5Vでの電解が可能になる「発展形電解装置」を提案し、その実用化を目標に研究開発を推進しております。

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