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アンモニアエコノミー
水素貯蔵・輸送媒体としてのアンモニア
アンモニアの生産量は、全世界で1億6,000万トン(2010年)。その大部分は肥料や薬品・繊維などの原料として使用されており、今後はフロン代替用熱媒体や排ガス脱硝用の還元剤としての需要もますます伸びていくものと思われます。一方で、アンモニアは、
・水素含有量が多く、貯蔵、水素の取り出しが容易
・炭素を含まないので、利用時に二酸化炭素が発生しない
・ハンドリング技術、安全管理、医療法が確立され、輸送・貯蔵のプロセスがよく理解されている
といった特徴があることから、私どもはこれまで、「水素を貯蔵・輸送するための水素キャリア」として注目してきました。
図 アンモニアの用途
表 各種水素貯蔵・輸送媒体の比較
アンモニアをキーマテリアルとする新しいエネルギーシステム
水素製造や水素利用技術は近年目覚しい進歩を遂げていますが、一方水素貯蔵・輸送技術に関しては、何を選択するかの方向性すら定まっていないのが現状です。そこで我々は、水素キャリアとして魅力溢れるアンモニアをキーマテリアルとして活用する新しいエネルギーシステム、「アンモニアエネルギーシステム」を提案しています。太陽エネルギーなどのクリーンなエネルギーをもとにアンモニアを製造し、安全で効率的な貯蔵・輸送を経て、地域や家庭、自動車などで直接的に、あるいは改質して得られる水素として間接的に、電力や動力を取り出すことができます。
人類の生存、持続的発展に不可欠な物質であるアンモニアが、21世紀のエネルギー環境問題の解決にも必ず大きな役割を果たすことになると、我々は考えています。
図 アンモニアエネルギーシステム
図 アンモニアを用いたエネルギーシステム
今求められる新しいアンモニア製造技術
近い将来、「アンモニアエコノミー」を実現するためには、「アンモニアの合成」と「アンモニアの利用」の際のエネルギー消費を低減することが不可欠です。特にアンモニアの合成においては、カーボンフリーのエネルギー源と原料を用いた低エネルギー消費の合成法が求められますが、100年を越える歴史を持つアンモニア製造法であるハーバー・ボッシュプロセスであっても、現行は水素を化石燃料の改質で得ており、アンモニア合成の適役とは言えません。
そこで我々は、「アンモニアエコノミー」を支えるアンモニア合成法としてMSEP(Molten Salt Electrochemical Process;溶融塩電気化学プロセス)による水と窒素から電解により直接アンモニアを合成する、新しい常圧アンモニア電解合成法を提案しています。この方法では、原料は豊富に存在する水と窒素であり、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーを利用して電解を行います。この合成法が確立すれば、従来のハーバー・ボッシュプロセスと比較して、低環境負荷・低コスト・低エネルギー消費でのアンモニア製造が可能になり、まさに次世代のアンモニア製造技術と言えます。
図 新しいアンモニア製造技術